第二章

お客思いの営業マンかを
判断する方法

勇人くん夫婦に会ってから1週間後、私の電話が鳴ります。勇人くんからでした。

勇人くん
もしもし。雄一さんですか?勇人です。先日はありがとうございました。
勇人くん、こんにちは。あれからどうなった?
勇人くん
はい。あれから妻と展示場に行ったんです。あ、今、ちょっと妻とかわっていいですか?
ん?いいよ。
みずきちゃん
雄一さん。先日はありがとうございました。実はあの後、展示場に行ったんですけど、ちょっといろいろあって、直接、雄一さんと会って話したいのでお時間をとってもらえませんか?
もちろん大丈夫だよ。だったらうちの展示場においでよ。

そんな流れで勇人くん夫婦がうちの展示場に来ることになりました。

みずきちゃん
急な連絡にも関わらずお時間をとってもらってありがとうございます。あの後、展示場に行ったんですけど…。
勇人くん
妻が営業マンに雄一さんから言われたことを投げてみたんです。「この図面と見積もりを勇人くんのお母さんとお父さんに見せる時間をくれますか?」という質問です。
ちゃんと言ってくれたんだね。そしたらどうだった?
勇人くん
妻は言いにくいと思うから僕が言いますけど、その質問をしたら営業マンの顔色が明らかにかわって、「こ、これまでほぼ完成した図面と金額になっていたわけじゃないですか!?この状態で親御さんに相談したら決まらなくなっちゃいますよ!まして住宅の素人に相談したところで余計に混乱するだけ!我々だけで進めましょう!」みたいな言葉がかえってきたんですよね。
やっぱり。予想通りだったね。
勇人くん
え?そうなんですか?
うん。それでそのあと勇人くんたちはなんて営業マンに返したの?
勇人くん
いや、まさかそんな答えがかえってくるとは思わなかったから、「家を建てるのに親に相談してはダメなんですか?」って聞きましたよ。そしたら、すごい怖い感じになって、「よくあるんですよねー。契約間近に親がしゃしゃり出てきて、今までやってきたことを全部覆されるとか、でもそういうの嫌じゃないですかねえ?奥様?」ってみずきに話を振ってきたんです。
おー、絵に描いたような典型的な営業マンだね。そう言われてみずきちゃんはどう思ったの?
みずきちゃん
はっきり言って幻滅しました。私、勇人のお父さんもお母さんも大好きなんです。私も契約前にはお2人に話に行くつもりだったし、それを営業マンもてっきり応援してくれると思っていたのに、お母さんたちを邪魔者扱いしたことにハッと目が覚めた感じがしました。あれ、この人、本当に私たちのこと、考えてるのかな?って。ただ売りたいだけなんじゃないかって。急いで契約したいだけなんじゃないかって。
勇人くん
あの営業マンの言葉で明らかにみずきの態度が一変したもんな。
みずきちゃん
一瞬で、なんかこの営業マン、もういいなって思いましたね。この人で家を建てちゃいけないって。冷静になれた感じがして、「1回しか建てられない家づくりをこの人に任せていいのか?」って冷めました。彼の本性を見た感じがしましたね。同時に勇人の言ってた違和感の意味がわかった気がしたんですよね。
勇人くん
でも雄一さんはなぜ、営業マンにあの質問をした方がいいっておっしゃったんですか?
それはね、恭子ちゃんから勇人くんの家づくりの相談を受けた時に、営業マンが勇人くんのお母さん恭子ちゃんに挨拶に行っていない時点で、勇人くんご夫婦の家づくりが親御さん抜きにして進められていることはわかっていた。その場合、考えられるのは2つ。契約直前になって営業マンが挨拶に行くか、あるいは親に内緒で契約をしようとしているか?でももし、本当に勇人くんたちのための理想の家づくりを考えてる営業マンなら、どっちもしないんだけどね。
勇人くん
え?そうなんですか?
そう。本物の営業マンであれば、なるべく早い段階で親御さんには挨拶に行くよ。それをすることで契約までに時間がかかることになったとしてもね。残念ながらこの業界には、そういうお客さん思いの営業マンは少なくなっているけど。
みずきちゃん
そうなんですよね!そんなこと当たり前にしないといけないのに、してくれると思っていたのに、あの人ときたら、親に内緒で契約しましょう!って何様のつもり!一瞬で冷めたわ。「この家づくりはいったん辞めにします!」って言ったら今度は上司が出てきて、「お互いに熱くなっているので一度冷静になってください。今決めてくれたらこれだけ値引きます!」みたいなことを言ってきて、上司も同じかよ!って。足元見てきやがって。ふんざけんなよ!って完全にここで家を建てることはないと悟りました!
み、みずきちゃん、恭子ちゃんみたいだね…。
みずきちゃん
ええ、お母さんとは気が合うんで!
みずきちゃんも勇人くんも良い経験をしたね。早く決めてもらうためにお客さんに考える時間を与えない手法がこの業界にはたくさん存在していて、多くの場合は、その手法に踊らされて契約をしてしまう。僕はそういうふうに家が建った人の後悔をたくさん受け取ってきた。この風潮が日本にある限り、理想の家なんて建たない。だから「3回建てないと理想の家にはたどりつかない」なんて言われているんだと思う。
みずきちゃん
あー、今思い出しただけでも腹立つ!あの時間はなんだったんだろう!自分にも腹が立つ!もうしばらく家はいいかなって。
勇人くん
おいおい、それはやめてくれよ。子ども部屋はどうするの?
みずきちゃん
そうね。でもまた同じようなことが起こるなら嫌!雄一さん、私たちはこれからどうしたらいいんでしょうか?
みずきちゃんたちが体験した家づくりは、家を建てるまでにいかに時間をかけず、いかに考えさせず、という風潮の中の家づくりだったはず。そういう家づくりは、将来のことを考えられて作られていないから、完成した家に高確率で様々な問題を引き起こす 。その度に家族に影響が及んで、家族のことを嫌でも考えさせられることになる。だったら、家を建てる前に、家族のことを考える時間を取ればいい 。本来はそれをしないと理想の家なんて建たない。それどころか家族に問題を引き起こすための家が建つことになったりする ね。
みずきちゃん
確かに、あのまま契約していたらそうなっていたかもしれない。
勇人くん
でも僕はみずきの目が覚めたことが嬉しいよ。
みずきちゃんは家族思いだから、結局、僕が関わっていなくてもいずれこういう結果になっていたと思うけどね。
みずきちゃん
雄一さん、改めて私たちに理想の家を建てるにはどうしたら良いか、教えてもらえますか?
もちろん。現代における家づくりは昔よりももっともっと難しくなってる。資材の高騰、情報過多、国が定める家の基準の上昇、売り手側による一方的な値上げなどなど。なのに建てる人の収入は変わっていない。こんな状況で理想の家を建てるなんて、昔よりも何倍も難しい よ。だから今の時代は、「家が手狭になったから」みたいな ”動機から家づくり” を始めてしまうと多くの場合、失敗するようになってしまっている 。今こそ家づくりの原点に回帰しないとね。
勇人くん
原点に回帰ですか?
そう。その原点こそ、”家を建てる前に家族のことを考える時間を取ること” 。現代の家づくりは、そのための時間を取らせないための要因がどんどん増え続けているわけだから。「じゃあどうしたら考える時間が取れるのか?」ってとにかく冷静にならないとね。
みずきちゃん
雄一さん、どうやればいいんですか!
そ、それをこれから話すよ。
みずきちゃん
もったいぶらないで早くしてください!
勇人くん、みずきちゃんってほんとお母さんみたいだね…。

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