第四章
真の住宅営業のあるべき姿とは?
コラム
営業の種類
私は住宅業界に40年います。内装屋さんから始まり現場監督、そして工務店の社長として家を作り続けてきました。僕が自分の会社を立ち上げる前にしていなかった職種が営業職で、だから余計に住宅の営業マンのことをよく観察してきていたのだと思います。
40年も営業マンを客観的に観察していたら、その特徴というか種類というのはわかってきます。売れている営業であっても売り方には明確な違いがあり大きく分けて3種類、その中で本当の意味でお客さんの理想の家を建てている営業マンは1種類だけということがわかってきました。
まず一番多いタイプが、設備や住宅性能、他社との比較や機能的な説明がうまくて、そういうものを求める客層に合致するために売れている営業マンタイプ 。そういう営業マンはとにかく知識に長けていて、お客さんに何を聞かれてもクレバーに切り返すことができる。
そういうタイプの営業マンは最新のもの、流行り、トレンドなどを敏感に吸収している傾向があるので、ネットが発達した現代においては、目の肥えたお客さんに的確に知識を与えられるため、ますます企業側も求めています。
でも昔からいるよくいるこの営業マンタイプは、住宅を売っているというよりも家電製品を売っているという感じで、家づくりに関しては、それが本当の意味でお客さん思いになっているのか?という部分は常に疑問でしたね、私は。住宅は車ではないですからね。
次に多いタイプは、家とは別の部分でお客さんを気に入らせることができるタイプ 。見た目だったり雰囲気だったり、人懐っこさ、あるいは、友だちのような関係が作れるといった、家以外の部分を購買理由にできるタイプの営業マン。正直、私も若い頃は女性のお客さんが勝手に私のことを気に入ってくれて、それだけで家を買ってくれた経験、何度もあります。歳をとってその能力はなくなりましたが(笑)
でも自分でも「この売り方でいいんだろうか?」私自身もそれをしてきたこともあったので、「もっと違う部分でお客様に訴求したい」と常にどこかで思っていたように思います。表面的な部分ではなくもっと深くお客様と関わりたいという気持ちからです。
実はこのタイプの営業マンは大手のメーカーに多く、相談に来られた勇人くんご夫婦の担当営業マンもおそらくこのタイプでしょう。
しかしこのタイプは、家以外の部分でお客さんを気に入らせることができるので、ある意味、非常にタチが悪く、家づくりの本質から離れたところで住宅が購入されてしまうこと もしばしば。「魔法が解けないうちに契約する」こんな言葉が住宅業界で存在するように、冷静さを失った状態で超高額のものが、しかも換えが効かない買い物が成立してしまうことはあまりにもリスクが大きい。
ましてその家でこれからの生涯を過ごし、家族内に多大な影響を及ぼす家が、こんな売り方で成立してしまうのは大丈夫なのか?ずっと疑問を抱いてきました。しかもこのタイプの営業マンは総じて売れる んです。
最後のタイプが第四章でお話ししていたタイプの営業マンです。思いやりがあり、潜在意識下にあるお客さんの本心を読み取り、その家に住む人の未来まで予測して家づくりを提案できるタイプの営業マン 。時に厳しく、お客さんのいうことを間に受けず、安易にお客さんの多様性を認めることなんてしない。それでは素人の家になってしまうことがわかっているからこそ、プロとしての圧倒的な自信を持つその人は、伝説の営業マンとして崇められていました。
以前は確かにそういう営業マンがこの業界にはいた。いつか私もそういう風に家を販売し、建てるすべての人に理想の家を手に入れてもらいたい。そんなことを考えながら過ごしてきたのがこの40年だったように思います。
家は日々進化し、どんどん金額が上がり、選択肢も増え続けている。でも家づくりそのものは進化してると言えるでしょうか?多様性を認めるという現代の風潮は否定しませんが、家づくりにおいて本当にお客さんの言うことをただただ聞くだけで良い家が建つのでしょうか?そんなことはドライなAIでもできる仕事であってプロとしての人の仕事ではないはず。
住宅のプロとしてプロでしかできない仕事とはなにか?お施主様の気持ちを読み取り、未来を予測し、何十年にわたってその中で住む家族にパワーを与え続けられる家。そんなことができる偉大な仕事、それが建築屋さんだと信じて、私は59歳になってもまだまだ引退なんてできないし、息子は継いでくれると言うし、この面白すぎる仕事に死ぬまで携わろうと思うわけです。
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