第四章

真の住宅営業のあるべき姿とは?

勇人くん
雄一さん、結局、理想の家を建てるにはどうしたらいいでしょう?
そうだね。結論から言うと、もはや運だね。
勇人くん
ん?雄一さん、ふざけてます?
いやふざけてなくて、住宅は素人が表面的な知識で学んだところで、間取りが読めないという大問題が存在してる以上、ちょっとくらい勉強したからって、1回で家づくりを成功させるのは至難の業。これが大前提としてあるから、もし1回で家づくりを成功させたければ、本物のプロに出会って導いてもらう必要がある。スポーツでも我流ではじめては低い限界があるよね。優秀なコーチに習って、自分の理想のフォームを身につけた人が上達するじゃない?でもゴルフならそういうコーチがいるけど、住宅だとそういう優秀なコーチが年々減ってきてしまっていて、大袈裟でなくそんな人を見つけること自体が難しくなっている。
勇人くん
あ、ゴルフはわかりますよ。最近始めたんですけど、僕は最初からコーチをつけたんです。そのコーチ、ものすごく教え方がよくて、メキメキ上達してるんですよ。自分の理想のフォームを僕の状況に合わせて作ってくれてるんです。
名コーチだね。住宅も同じだよ。ゴルフなら自分に合わないコーチなら替えればいいけど、住宅はそうはいかない。住宅ってゴルフ以上にコーチを替えにくいよね。一度、ある程度のところまで話が進んでしまうと、何かちょっと違和感があったところで替えにくいし、契約した後だとさらに気が引けるし、ましてメーカーごとを替えるとなったら物凄いエネルギーはいるし違約金は発生するし、だから住宅の場合は、一発目の営業マンで大吉を引かないといけない。でもその大吉が絶滅危惧種になっているとしたらどうする?
勇人くん
運じゃないですか!
でしょ?ある意味宝くじ。これが今の住宅業界の現状。
みずきちゃん
雄一さん、昔は違ったんですか?
今よりはね。早く決めてくださいという風潮は昔からあったけど、今よりも人に対して思いやりがあったよね。ダメなところはダメだって営業はお客さんに言っていたし、お客さんの言うままに家を建てるなんてことも、今よりは少なかったと思う。でも現代は、多様性を認めないといけないという名のもとに、どんどん人間関係がドライになってしまっている。ある意味、お客さんのことを思って一生懸命やる人がバカを見る時代になってしまっていて、住宅メーカーも、とにかく売ってくる人、言うことを聞く人を認める傾向がどんどん強くなっていて、私の知ってる素晴らしい営業マンも大手のメーカーを離れたね。
勇人くん
そうか。なら僕らは出会えないじゃないですか!
そうかもね。でも勇人くんご夫婦の要望をとにかくたくさん聞いてくれる人や、2人の言うことをそのまま採用してくれる営業マンには出会えるよ。
みずきちゃん
もう出会ったし!
ちなみにゴルフだと理想のフォームを解説してくれるyoutuber先生がいるでしょ?でも住宅だとそんな人いないよ。だからネットの情報をそのまま営業マンに要望して「いいですねー。採用しましょう!!」なんて感じで家を作ると、ど素人が作ったとんでもない家が出来上がる。まさにそれが量産されているのが今の住宅業界。これは完全に売り手の問題。昔の本物の営業マンであればそんな採用の仕方は絶対しない。
勇人くん
昔の本物の営業マンってどんなことをしていたんですか?
そうだな。住宅の世界では伝説とされる営業マンは多くはないけど存在した。彼らを見た時、男が惚れるというか、かっこいいんだよね。男前とかそう言う意味じゃないよ。なぜ、すごいかというと、彼らはお客さんの本心から未来を予測して家を作っていた 。これが本物の営業マンなんだよね。
みずきちゃん
ど、どういうことですか?
家づくりの失敗ってほぼ100%、建ててから「もっとこうしておけばよかった…」と思うことで失敗になるよね。だから建てた後、「もっとこうしておけばよかった」という部分がない家は成功した家と言える 。さらに言うと、その家に住み続ける中で、「ほんとにこの家でよかった」という納得が連続して発生してどんどん愛着が湧いていく家、これが理想の家 だと思うんだよね。そんな家を建てる前から予測して考えることができる。これが本物の営業マンだよ。
勇人くん
そ、そんなことができれば理想ですけど、本当にできる人がいるんですか?
これがいるんだよね。もちろん、そういう営業マンは圧倒的な成績を残していたし、ただ売り上げるだけじゃなくて、とにかくお客さんの満足度が高かった。だからどんどん紹介が発生する。私は現場上がりの人間だけど、そういう営業マンは、現場の人間から見ても憧れたし、私も営業をするならそんな人間になりたいと思った。若い時は自分との違いを感じて悔しさも感じたりしたね。やっぱ営業は花形だなあって。だからこそ、今の住宅業界を見ると、腹立たしくなっちゃうんだよね。売ることだけが住宅営業じゃないんだよ。
勇人くん
へえ。そういうすごい営業マンってどうやって家を作っていくんだろう。
そういう伝説の営業とされる人には明確な特徴があったね。まず大前提として、お客さんとその家に住む家族のための時間を取っていた 。家は家族のためのものだからね。値引きますから早く決めてくださいなんて言わない。それは二流の人。あと、ここが並の営業マンと違う最大のポイントなんだけど、その人たちはお客さんとの会話の中から、お客さんの潜在意識の中のお客さんも気づいていない本心から来る理想を言い当てる力があったということ
みずきちゃん
ん?ん?
そうだな。例えばみずきちゃんってなんで家を建てたくなったの?
みずきちゃん
子ども部屋が欲しくて。
そう。表面的な理由はそうだよね。でもだったら広い賃貸でもいいわけじゃない?建売りでも、あるいはマンションでも。だからそこには表面的ではない一戸建てを選んだ理由があるはずなんだよね。でもみずきちゃんたちもそんなことはわかっていない。そこを伝説の営業マンたちは、会話の中から、みずきちゃんたちの本心を読み取っていく。「本当はこんな理由から家を考えられ始めたのではないですか?」そしてその指摘が図星で的確。「あ、私たちは●●の理由で一戸建てを欲しかったんだ!」気づきと驚きの中で家づくりの構想が進んでいく。彼らはまた、会話の中で、みずきちゃんたちの家族の未来まで予測したその家に住む人たちの将来までのことを汲み取れるから、みずきちゃんたちがまったく予想しなかったそこに住む家族のための理想の家が図面上に表されていく。そんな家づくりの提案を受けているお客さんはもう目が輝いてるよ。その家に住んだ後の生活、家族の成長、建てる前からその家に住んだ後の未来がお客さんも見えるような感じで、家づくりがワクワクとして快感の中で進んでいく。みずきちゃんたちの家づくりはどうだったかな?
みずきちゃん
そんなもん、あるわけないじゃないですか!営業マンにはドキドキしてたけど♡
勇人くん
あー、今わかった!僕の違和感は本物だったんだな!やっぱり僕が正しかった。おかしいと思ったもん!あれはないぞって!みずきは騙されてるって!やっぱ僕の勘はいつも正しいんだよ!
みずきちゃん
はあ?なーに調子に乗ってんだ?もとはいえば勇人が優柔不断だから私が先頭を切って家づくりを進めていたんでしょ!バカじゃないの!
勇人くん
す、すみません。調子に乗りました…。
今回は実際、勇人くんの違和感が功を奏したわけだし、みずきちゃんもわかってあげてよ。
みずきちゃん
ふん!
私が営業マンに、「この図面と見積もりを勇人くんのお母さんとお父さんに見せる時間をくれますか?」と質問してみてって言ったでしょ?これは何をしてたかというと、その家づくりが本当に勇人くん夫婦のためを思って行っているか?を試した。家族のことを本当に考えた家づくりになっているかどうか?をね。伝説の営業マンはね、その人から本心を読み取る力という凄さもあるんだけど、大前提として思いやりがあった 。その家に住む人のことを親身になって考えることができる温かさ。それがあるから、ある意味、お客さんの言うことを簡単に間に受けないし、素人考えの意見は否定することもあるし、お客さんにとって家に必要なものと必要でないもの を的確にお客さんに提案していた。そういう過程で作られた家は、家の隅々まで、「なぜこうなっているのか?」という理由と意味が包摂される 。「なぜこのリビングの広さなのか?」「なぜこの玄関の位置なのか?」「なぜこの家にはこの設備が必要なのか?」すべての意味を住んだ人が理解できる。だからその家に訪れた人に話すよね?説明したくなる。そういう家を建てた人周りにいる?
勇人くん
いませんね。この前建てた友人の家に行ったら、最新のキッチンの自慢をされました。
それが今の家づくりの典型だよね。今度、なぜこの間取りになったかを聞いてごらん?
勇人くん
いや聞きましたよ。よくわからないって。対面型がおすすめされたからとか言ってたかな。
勇人くんたちが建てる家は、家の隅々までその理由を誰かに説明できるような家にしたくない?
勇人くん
そりゃもちろんしたいですよ。
みずきちゃん
あのー、ちょっと言っていいですか?
どうぞ。
みずきちゃん
私たちの担当の営業マン、今、雄一さんが言った伝説の営業マンにかすりもしないんですけど!でも本当にそんなすげー人いるんですか?もし最初からそういう人に出会えてたら私たちの家づくりは変わったのに。
いるよ。でもものすごく少ないだろうね、今の時代では。
みずきちゃん
じゃあダメじゃないですか!
勇人くん
できることなら僕たちも伝説の営業マンみたいな人から家を買いたいなあ。僕らの家もそういう営業マンに提案してほしい。
うん。見えてきたんじゃない?自分たちにふさわしい理想の営業マン像が。それだけわかっただけでもよかったと思うよ。
みずきちゃん
いやいやいや、よくないでしょ!そういう営業マンがいないなら私たち、失敗するじゃないですか!
そんなことはないけど、改めて今二人は僕が言ったような伝説の営業マンのような人から家を建てたくなった?
勇人くん
なりましたよ!あ、もしかして雄一さん、そういう人を知ってるんですか?
現役では知らないかな。
勇人くん
えー。
でも伝説の営業マンがしていた以上の家は提案ができるよ。
みずきちゃん
どういうことですか?
これから話すよ。私たちが開発した理想の家を建てるためのとっておきの仕組みを。
みずきちゃん
私たち?
そう。私たち。

コラム

営業の種類

私は住宅業界に40年います。内装屋さんから始まり現場監督、そして工務店の社長として家を作り続けてきました。僕が自分の会社を立ち上げる前にしていなかった職種が営業職で、だから余計に住宅の営業マンのことをよく観察してきていたのだと思います。

40年も営業マンを客観的に観察していたら、その特徴というか種類というのはわかってきます。売れている営業であっても売り方には明確な違いがあり大きく分けて3種類、その中で本当の意味でお客さんの理想の家を建てている営業マンは1種類だけということがわかってきました。

まず一番多いタイプが、設備や住宅性能、他社との比較や機能的な説明がうまくて、そういうものを求める客層に合致するために売れている営業マンタイプ 。そういう営業マンはとにかく知識に長けていて、お客さんに何を聞かれてもクレバーに切り返すことができる。

そういうタイプの営業マンは最新のもの、流行り、トレンドなどを敏感に吸収している傾向があるので、ネットが発達した現代においては、目の肥えたお客さんに的確に知識を与えられるため、ますます企業側も求めています。

でも昔からいるよくいるこの営業マンタイプは、住宅を売っているというよりも家電製品を売っているという感じで、家づくりに関しては、それが本当の意味でお客さん思いになっているのか?という部分は常に疑問でしたね、私は。住宅は車ではないですからね。

次に多いタイプは、家とは別の部分でお客さんを気に入らせることができるタイプ 。見た目だったり雰囲気だったり、人懐っこさ、あるいは、友だちのような関係が作れるといった、家以外の部分を購買理由にできるタイプの営業マン。正直、私も若い頃は女性のお客さんが勝手に私のことを気に入ってくれて、それだけで家を買ってくれた経験、何度もあります。歳をとってその能力はなくなりましたが(笑)

でも自分でも「この売り方でいいんだろうか?」私自身もそれをしてきたこともあったので、「もっと違う部分でお客様に訴求したい」と常にどこかで思っていたように思います。表面的な部分ではなくもっと深くお客様と関わりたいという気持ちからです。

実はこのタイプの営業マンは大手のメーカーに多く、相談に来られた勇人くんご夫婦の担当営業マンもおそらくこのタイプでしょう。

しかしこのタイプは、家以外の部分でお客さんを気に入らせることができるので、ある意味、非常にタチが悪く、家づくりの本質から離れたところで住宅が購入されてしまうこと もしばしば。「魔法が解けないうちに契約する」こんな言葉が住宅業界で存在するように、冷静さを失った状態で超高額のものが、しかも換えが効かない買い物が成立してしまうことはあまりにもリスクが大きい。

ましてその家でこれからの生涯を過ごし、家族内に多大な影響を及ぼす家が、こんな売り方で成立してしまうのは大丈夫なのか?ずっと疑問を抱いてきました。しかもこのタイプの営業マンは総じて売れる んです。

最後のタイプが第四章でお話ししていたタイプの営業マンです。思いやりがあり、潜在意識下にあるお客さんの本心を読み取り、その家に住む人の未来まで予測して家づくりを提案できるタイプの営業マン 。時に厳しく、お客さんのいうことを間に受けず、安易にお客さんの多様性を認めることなんてしない。それでは素人の家になってしまうことがわかっているからこそ、プロとしての圧倒的な自信を持つその人は、伝説の営業マンとして崇められていました。

以前は確かにそういう営業マンがこの業界にはいた。いつか私もそういう風に家を販売し、建てるすべての人に理想の家を手に入れてもらいたい。そんなことを考えながら過ごしてきたのがこの40年だったように思います。

家は日々進化し、どんどん金額が上がり、選択肢も増え続けている。でも家づくりそのものは進化してると言えるでしょうか?多様性を認めるという現代の風潮は否定しませんが、家づくりにおいて本当にお客さんの言うことをただただ聞くだけで良い家が建つのでしょうか?そんなことはドライなAIでもできる仕事であってプロとしての人の仕事ではないはず。

住宅のプロとしてプロでしかできない仕事とはなにか?お施主様の気持ちを読み取り、未来を予測し、何十年にわたってその中で住む家族にパワーを与え続けられる家。そんなことができる偉大な仕事、それが建築屋さんだと信じて、私は59歳になってもまだまだ引退なんてできないし、息子は継いでくれると言うし、この面白すぎる仕事に死ぬまで携わろうと思うわけです。

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