第七章

「家族の未来予想図」を使った
非常識な家づくりの手順

ということで最後に「家族の未来予想図」の詳細について話すけど、勇人くん夫婦は、世間一般の普通の家づくりじゃなくて、ちょっと時間はかかるけど、自分たちの未来を見据えて理想の家を作ることを選択するかい?
みずきちゃん
当然!「あなたの要望を聞いてあげたでしょ?だからもう早く決めてください!」にはそそのかされません!
勇人くん
僕もです。自分の中の違和感が間違ってなかったと今は確信してます。僕たちの理想の家づくりはそこにはなかったことを。そして今、雄一さんと加奈子さんが携わってくださる家づくりに僕たちはそこなんだ!と思えます。
わかった。嬉しいよ。私たちの本意が伝わった感じがして。
加奈子さん
私も。
未来を予測して作る家づくりは、そこに住む人の生き方を反映して理想の家を作っていく 。生き方は人それぞれだし、結婚して家を建てる場合には、その生き方が2つ合わさったものを家に反映していかないといけないわけだから、本来はすごく時間がかかるはずなんだよね。
勇人くん
生き方を反映してですか…。
家族の将来の生き方まで見越してね。
勇人くん
将来?
そう。だって家づくりの失敗って、建てた瞬間はそんなに実感はないんだよ。でも早ければ数ヶ月後、数年後、あるいは数十年後に「あー、失敗だった!」っていう実感として現れる。
加奈子さん
ちなみに失敗する家って、建てた人は建てた瞬間からもう違和感として感じていたりするんだよ。でも自分では失敗と思いたくないからその違和感を押し殺して住むわけだけどね。そしてある時、問題が爆発して発生する。
勇人くん
違和感を押し殺して住み続けるなんて嫌ですね…。
勇人くんは家が建つ前から違和感を感じられていたわけだからすごいんだよ。
勇人くん
そうですかね。
加奈子さん
実は私も家づくりで大失敗をしてるんだよ。24歳の時に超大手のメーカーで家を建てて、完成半年後にその家を出て、一年後に離婚した。家づくりにおいて最大クラスの失敗をしてたりする(笑)
みずきちゃん
加奈子さん、やらかしてますねー。
加奈子さん
でしょ?もう家を考えてる時から営業マンとギスギスしてたし、当時若かった私たち夫婦もよくわからなかったから営業マンにすべてを委ねてしまった。そしたら家族が破綻した…。
みずきちゃん
あ、私たちもあのまま進んでいたら加奈子さんと同じようなことになっていたかもしれない…。すでにギスギスしてたし。
加奈子さん
ほんと立ち止まれてよかったね。私のような悲劇は私だけで十分(笑)ちなみに、私はそれだけで終わらなかった…。家を建てたあと、父も突然死で亡くしてるからね。完成から1ヶ月後にいきなり父が死んじゃった…。
みずきちゃん
え?
加奈子さん
家って大きなエネルギーが動くんだよね。だからよくこういうことが起こってる。”家を建てたら誰かが亡くなる”、”家を建てたら離婚する”、”家を建てたら家族が壊れる”、ちなみに私はすべて経験しておいたから(笑)笑い話にもならないね。こんな思いは私だけでいいよ。
みずきちゃん
加奈子さんって雰囲気に似合わず、すごい体験されてるんですね…。
加奈子さん
まあね。私が言いたいのは、家を建てるときは急いで建てては絶対ダメだということ。まして家族のことを営業マンに任せちゃうなんて論外。その人が本当にみずきちゃんの家族のことを考えてくれているかなんてわからないよ。私がわかりやすい失敗例。だから、私は雄一さんと「家族の未来予想図」を開発した。私に読心術みたいな能力がもしあるなら、その力をみずきちゃんたちのために使って家づくりに反映させるためのツールをね。
みずきちゃん
私ったら営業マンに身を任せてたなー。どっぷりいっちゃってました♡
加奈子さん
家づくりのやり方なんてみんな知らないし、素人じゃわからないし、みんなそうなるよね。まして高い買い物だから普通の状態ではびびってしまうから、自分たちにも勢いが必要なんじゃないか?って思いがち。でもそれは大きな間違い。勢いなんていらない。冷静に未来を予測しないとね。
みずきちゃん
なるほど。でもどうやって未来を予測するんでしょうか?
加奈子さん
家族の未来って予測できるんだよ。やり方はこう。まず私はご主人さんの0歳から12歳までを探っていく 「家族の未来予想図」はご主人さんの過去を振り返ってもらうことから始まる んだよ。宿題に答えてもらう形でね。その文章から雄一さんのおっしゃる読心術を使って、勇人くんの価値観を抽出する
勇人くん
ぼ、僕の幼少期??価値観?
加奈子さん
そう。人の価値観ってね、0歳から12歳で作られて完成してる んだよ。だからそこを見にいく。あ、ちなみにね、会社の社長さんや経営者さんの理念を抽出するときもまったく同じことをする んだよ。その人の生まれた時から12歳までをさかのぼって内観してもらい、そこから共通する価値観を抜き出していく。それを踏まえて未来を予測する。その未来こそが経営者の理念になる というわけ。
みずきちゃん
うわあ、加奈子さん、いきなり難しいことを話し始めましたね。
加奈子さん
難しいよね。でももう少し聞いてね。勇人くんの幼少期をさかのぼって価値観を抽出すると何がわかるかというと、みずきちゃんとなぜ結婚したのか?みずきちゃんを選んだ理由もわかるんだよ。結婚って基本的には同じ価値観を持ったもの同士が引き合って結婚する からね。ちなみに価値観にずれがあると私のように離婚になるよ(笑)この未来予想図は家づくりの枠を超えて、2人がなぜ出会ってなぜ結婚し、なぜ家を今、建てようと思っているか?その理由が紐解かれていく感じになるから面白いよ。勇人くんから価値観が抽出できたら、今度は、お互いが引き合ってる共通の価値観を抽出する 。価値観がわかるとみずきちゃんたちの未来が予測できる。するとその家で実現するべき世界が見えてくる。
みずきちゃん
なんかすごいですけど、よくわからないですね。
加奈子さん
よくわからなくて大丈夫。だってこれは私が行う作業だから。それでエーテルに呼ばれてるわけだしね。でも理屈で言うと、家族の未来を予測するってこういうこと。その家族が家を建てた後、どうなっていって、どういう変化をするか?結婚って、究極を言うと、違う2人の人間が1つになるための試練みたいなもの だから、共通する価値観がわかればそれが夫婦や家族の指針になる。だから家族の理想の未来が予測できるよっていう理屈。わかるかな?
みずきちゃん
うーん、正直わかりません。
勇人くん
僕はなんとなくわかるな。あの営業マンに違和感を感じたのも、どこかで自分の価値観に合わないというか、みずきも絶対、わかってくれるはずって信じたところがありますから。このまま進んだら絶対うまくいかないってなんとなく自分の中で確信していた部分があります。
加奈子さん
多分だけど、未来予想図を書くと、今回なぜ、その営業マンに違和感を感じた理由も言語としてわかってくるよ。同時に自分たちがどんな家を建てたいのか?ってこともね。
勇人くん
へえ。面白そうですね。なんか家づくりっていうよりも自分たちのことを考えるための時間って感じですかね?
加奈子さん
そうだね。でも、本来はそれをするのが家づくりなんだよ。スーパー営業マンと言われる人たちはそれを感覚でやってる。頭の中でお客さんの未来予想図を描いてる。だから理想の家が提案できる。それを体系化したのがこの「家族の未来予想図」ってわけ。
勇人くん
へえ。面白い。僕からどんな価値観が炙り出されるんだろう?
加奈子さん
面白そうでしょ?炙り出された価値観から今度はそれを間取りとか家づくりにおいて必要なもの、必要ないものに反映していく。ここからは雄一さんの仕事。
現代の家づくりってね、オプションが多すぎるんだよね。太陽発電にタイル外壁、蓄電池に、豪華絢爛なキッチンなどの設備、家電と連動したシステムに、気圧をコントロールする給排気システムなどなど。でもそれらの設備ってなんのために採用するのかって説明できるお施主さんは非常に少ない。その人でもつけている理由がわからないものを、大切な建築費に使う必要ってある のかな?そうじゃなくて、加奈子さんが抽出してくれたお施主さんの価値観に基づいて必要なもの、必要でないものを選別しておかないと、家じゃなくて家電とか車のような家になってしまうのが現代の家づくり なんだよね。
勇人くん
ほんとそうですね。よく考えたら昔だったらないものばかり。
加奈子さん
そうだよ。昔はそんなハイテクな設備とか選択肢がなかったから、純粋に家だけを建てる環境があった。でも今は違う。家以前につけられるものが多すぎるし、しかも建築価格が上がっているし、さらにお給料はそのままだから、必要なもの必要でないものをしっかりとお施主さんが認識していないと、ちっちゃくて必要ない設備が搭載された ”家以下のもの” が出来上がる 。本来は間取り以上に優先させるものはないはず なんだけどね。でも今は、間取りなんて優先されず、インスタに並ぶ情報は表面的なものだけがクローズアップされる。映えることが最優先されちゃう。
みずきちゃん
ほんとだ。私もいつの間にか毒されてた!大事なのは間取りですもんね!
加奈子さん
生活は間取りで決まるからね。一戸建てを建てる意味ってそこにあるでしょ?自分たちで間取りが作れること 。ゼロからね。太陽光発電を載せられることではないはずだよね、一戸建てを建てようと思った最初の理由は。建物の作りと間取り以外のものは付録 であって、後からだってなんとかなる。でも間取りはなんともならない。そこに価値観を反映しないと理想の家は建たないよ。
勇人くん
そっか。ようやくわかってきた。いつのまにか僕たちは現代の家づくりという環境に染まってしまっていたんだな。今思えば加奈子さんが言っていることはすごく当たり前のことで、冷静に考えればよくわかる。でもそんなことを考える時間さえ削がれていた気がする。もっと時間をかけるべきだった。もっともっと真剣に家のことを考えるべきだった。自分たちの未来のことも。
加奈子さん
わかってくれて嬉しい。でもね、私たちが開発した「家族の未来予想図」は、実はそんなに時間がかからないんだよ。
勇人くん
え?そうなんですか?
加奈子さん
そう。「家族のための未来予想図」が完成するまでの時間は1ヶ月 。その人の中の価値観って幼少期に決まってるっていったでしょ?だから時間をかけて考えても出てくるものじゃないんだよね。でもさすがの私も情報がないとその人の中から価値観は抽出できないから、その情報をもらうための期間はやっぱり1ヶ月くらいいる。でもそれで十分。その間は頑張って宿題を提出してもらう必要があるけど。家づくりの前の大切な時間になるよ。
私は「家族のための未来予想図」ではなく、会社の理念を出すために加奈子さんとこの宿題のやり取りをさせてもらったけど、幼少期のことを引っ張り出してくること自体が大変だったね。だって50年以上前のことだからね。でもそうやって宿題に答えているうちに忘れていたものを思い出すというか、自分の体験してきたことが同じようなパターンを繰り返しているな、みたいな不思議な感覚を覚えたんだよね。その後、提出した文章から加奈子さんが私の価値観を言葉にしてくれたわけだけど、なんで私が提出した文章からそんな価値観が文章化されるのか?さっぱり意味がわからないんだけど、これがすごいんだよ。なんといっても加奈子さんに自分の価値観を言語化してもらってから会社が180度変わってしまった からね。あと息子との関係も。
勇人くん
へえ。すごい。僕らは家づくりでそれを体験できるのか…。僕がそれをしてもらったらどんなことになるんだろう?
加奈子さん
雄一さんに行ったのは会社の理念を出すためのもので、「家族の未来予想図」の場合はちょっと違う部分もあるけど、基本的にはやることは同じ。つまり、会社の社長さんに私がやっていることを住宅を建てるということに応用したのがこの「家族のための未来予想図」というシステム 。家を建てるのにまずは1ヶ月、カウンセリングから入るなんて現代の日本においてないと思うけどね。でも遠回りのような1ヶ月という期間が家づくりを変える。これが理想の家に近づくための最短距離であるということを私たちは信じてる。だからこのシステムを開発したんだよ。
みずきちゃん
勇人から価値観がわかったとしてそれを間取りに反映していくわけですよね?だとすると間取りは加奈子さんに決められてしまうということですか?
加奈子さん
そうじゃないよ。私が携わる部分はお2人の価値観を言語化する だけで、それをもとに間取りだったり、必要なものだったりを決めていくのは2人だから。雄一さんがやってくれるよ。でもその手順をもとに採用されたものはすべて、2人がちゃんと意味を説明できる はず。「なぜリビングはこの広さなのか?」「なぜここに収納がいるのか?」「なぜ気圧のシステムを搭載したのか?」自分たちですべてを説明できる。自慢したくなる。だって自分たちの価値観が反映されているわけだからね。
みずきちゃん
そっか。自分で決めるんですね。
加奈子さん
そう。私は家づくりの大枠を作る 。あとは2人がやりたいようにやればいい。でも多くの場合、この大枠がわかっていない 。どんな価値観を元に作られた家なのか?コンセプトは?「家族の未来予想図」が完成すると、みずきちゃんたちにとってのその家は何を実現できるものなのか?が明確になる 「●●が実現する家」という確固たるコンセプトが出来上がる。●●の部分はなんなのか?●●が決まればあとは何が必要なのか?すべてわかってくる。ちなみに雄一さんの息子さん秀弥さんの家は、その価値観から「秋を実現する家」というコンセプトになっている。今度、中を見せてもらったらいいよ。
みずきちゃん
秀弥くん、そういえば家建てたんですよね!見てみたい。
「●●を実現する家」の●●の部分が決まってない状態で家を建ててる人、ほとんどじゃないかな?これが決まってないからとっ散らかった家になるし、人が考えたどっかから持ってきたコンセプトだと、そのコンセプトを考えた方の自己満足の家が出来上がる 。私は家は設計士の作品ではないと思ってる 。だからちゃんと2人には自分たちで●●の部分を考えてもらいたいし、自分たちに価値観を反映してほしい。でもその言語化能力はどうしても読心術みたいなスキルが必要だから、それができる人をずっと求めていた というわけ。
勇人くん
なるほどなー。自分たちの価値観を反映したコンセプトで家を作っていくわけか。それを家族で共有して、そりゃ、そこに住む人は良い家族になりそうですし、その家を家族が大事にしそうですね。
加奈子さん
勇人くん、すごくよくわかってきたね。ここまでの話についてきてること自体がすごいし、この言語で説明しにくい部分をわかってくれたら、私たちは2人の家づくりに携われる 。でも逆に今までのことがいまいち、理解できない人は難しいかな。自分が探られるのが嫌な人 もね。それだと価値観は出せないし、私も読心術が使えない
勇人くん
なんとなくですよ。なんとなくわかります。なんか家づくりというよりもっと深い部分なんだなって。でもどんな仕事でも、一流の人は、人のその部分を動かしてるような気がするんですよね。雄一さんが伝説って言っていたのがよくわかりました。あの営業マンとは次元が違います。
みずきちゃん
あのー、ふと疑問が湧いたんですけど、加奈子さんの読心術を使った未来予想図から考える家づくりって風水とか占いを元にした家づくりみたいなものとは違うんですか?
加奈子さん
ぜんぜん違う。なんで風水とか占いとかで家を建てるかわかる?
みずきちゃん
うーん。自分の家が間違ってないというか、不安がないようにするためですかね?家族に何かあった時、そういうのを無視したからって言われるのが嫌だし。
加奈子さん
そう。でも風水とか占いを元にした家づくりってあくまでも先天的というか過去の統計から基づいた家づくりであって、そこに住む人の生まれた時からこれまでの後天な要素を反映した家づくりではないよね?むしろその法則にしたがってしまうことで制限してしまうことだってあるよ。でもそれもなぜするかというと、自分が建てた家に意味を持たせたいから。後悔したくないから。だからそういうものに頼るのはわからないでもないけど、私たちが行う家づくりは根本的にそことは違う。後天的な部分、生き方から考えていく。わかるかな?みずきちゃん。
みずきちゃん
わかります。私たちも図面なんかあっという間に決まっちゃったから不安で、営業マンから「鬼門を外してますからいい家ですよ!」とか言われて、じゃあ安心なんだ!って言い聞かせていたところがありますから。でもそれだけ不安だったって証拠ですね。
加奈子さん
そうだね。家づくりって楽しいはずが不安ばっかりになるよね?住宅の営業はね、お客さんがどうなりたいか?どんな家にしたいか?を本心から抽出するのが仕事 であって、不安を炙り出して、何かの法則に当てはめてそれを消すのが仕事じゃない よ。私たちの行う家づくりは不安を消していくものじゃない。その人が生きてきた中で、何が必要で、何が大切な価値観で、どんなものを採用すれば理想の生活に近づくのか?そこをみずきちゃんたちと一緒に考えていくのが私たちの家づくり。だから不安を消すのではなく、楽しさを増幅させていくことになる。住宅を提案する営業や設計はそれができなきゃダメなんだよね、本来は。
その話、工務店としても耳が痛いところがあるなあ…。でも風水とか占いを使った家づくりをしている人でも、伝説クラスの人は、人の後天的な生き方とちゃんと結びつけて提案してるもんなあ。決して不安を消すために使っていない。本物はやっぱり共通するのか…。
加奈子さん
ちなみに24歳の私が建てた家は、鬼門とかそういうものをちゃんと見てもらって建てたんだよ。でも建ててすぐ父を亡くした。何かあった時のためにしたはずが役に立たなかった…。だから余計にわかるんだよ。家づくりを成功させるための一番重要な要素は、鬼門を外すことじゃない。家族のことを真剣に考える時間を作ること。家づくりを通じて夫婦や家族のことを考えること。若かった私はそこが全然わかってなかった。
みずきちゃん
そっか。私たちもほんとそんな時間はなかったです。加奈子さんと同じだった…。
加奈子さん
未来予想図はね、そこに住まう人の生き方から家を作っていくための準備のためのもの 。しっかりと家族のことを考える時間をとって、自分たちの理想の家を建てるために未来を考える時間 。これはもはや単なる家づくりではないよ。
人づくりだね。
加奈子さん
人づくり…、それ、雄一さん、ずっとおっしゃってますよね。
そう。だから加奈子さんのような人をずっと探してきたというわけ。
みずきちゃん
うわあ、楽しみになってきた!家を建てたいと思った時の感覚が戻った感じ!早く「家族の未来予想図」を作りたい!ワクワク感がある!これが家づくりなんですね!で、どうしたらいいですか!?

おしまい

あとがき

さていかがでしたでしょうか?かなり過激なことも書いてきましたが、それもこれも、現代の住宅業界に強い憤りというか、変えないといけないという強い思いがあるからこそなんですよね。

誰が作ったかは知らないですけど、住宅業界に存在する「とにかく早く決めてください」という風潮。その風潮は何十年経っても変わらず、それどころか現代の多様性を認めないといけない時代と相まって、ますます巧妙になるばかりのように感じます。

家づくりは一生に何回もするものじゃないし、素人は住宅に関して無知だということをいいことに、とにかく頭を使わせないために繰り出す業界が生み出した様々なキラートークの数々。「みんなやってますよ」「大手だから安心ですよ」「設計士に任せた方が無難ですよ」「不安な部分は占いに任せましょう」そうやって顧客に頭を使わせないようにして売るやり方で一番頭を使っていないのは実は売り手側です。本来は売り手側がお施主様の未来についてもっと頭を使わなければいけない。

家づくりにおいて主役はお施主様です。それなのにお施主様のことを考えずとにかく売ることだけを考えて今日もへんな家が量産されていく。日本の住宅業界はこのままで良いのか?この怒りにも似たモヤモヤした感情がピークに達した時、私はこの書籍の共同著者である倉地加奈子さん、監修者である倉地類人さんにお会いしました。

もうこれは ”出会いのもの!” だと思った。これまで私が追い求めていた最後のピースをとうとう手に入れた!と思った。これなら住宅業界を変えられる!と。

一部の伝説の営業マンだけが行っていた、お施主様の未来までを予測して考える家づくり。私も不器用ながらずっと行ってきたように思います。戸建てでも賃貸でも常にそれを考えてきたからこそ、曲がりなりにもこの業界に40年携わり、だからありがたいことに私の仕事に魅力を感じ、息子が自分の会社を継ぎたいと言ってくれたのだと自負しています。

でもまだ何かが足りなかった。私にはどうしてもない才能をもった人の力が必要だった。私よりもさらにその力を極めた人を見つけた時、私の行っていきたい理想の家づくりの形が完成したように思います。

私はこの「家族のための未来予想図」を使った家づくりで日本の住宅業界を変えます。そしてこの家づくりを通じて理想の家を手にした人たちと一緒になって、「家って家族にとってこんなにも大事で、大切で、すごい力があるんだ!」という喜びを共有し、思いやりというエネルギーの渦を作っていきたい。

この家づくりのやり方は万人受けはしないかもしれない。私も自分の考え方に共感してくれない方の家づくりに携わるつもりはありません。まして私は、お客様の意見をすべて聞き入れるイエスマンでは決してない。でも、家族と幸せに暮らしたいと思っている人たちと出会いたい。家族のことを思いやれる人と出会いたい。その人たちのために、良い家を建てるためだったら、住宅のプロとして時に叱咤激励だってすることだってある。思いやりとはそういうことだと思いますし、これからもそんな仕事ができたらと考えております。

さて最後に、住宅業界の裏側を躊躇なく暴露してくれた倉地加奈子さんご夫婦と、私たちと一緒になって住宅業界を変えたいと強い思いで集ってくれている工務店の同志たち、私の会社を継ぎたいと言ってくれた息子、そしてこれまで私で建ててくれた400名以上のお施主様に感謝を申し上げて、この書籍を終わりにしたいと思います。

長い文章になりましたが、この書籍があなたの家づくりに何かしらのプラスになれたのなら幸いです。最後まで読んでくださり誠にありがとうございました。

あなたの家づくりの成功と理想の家の完成を心より願っております。

株式会社エーテル
伊藤雄一

最後まで読んでくれたあなたに特別なご提案です

書籍を読み終えて今の自分をなんとかしたい!私とお話ししてみたいと思った人必見!

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