2-vol1
この書籍には、家づくりで家を建てる人がなぜ不安になるのか?そしてなぜ多くの人が家づくりで失敗するのか?その理由がかなり具体的に書かれています。
「3回建て替えないと理想の家は建たない」
家づくりにおいてよく言われる迷信はなぜ生まれたのか?それにはちゃんと理由があって、その理由がこの書籍を最後まで読んでもらった時、クリアになるはずです。
と、いろいろと前書きをしたいところなのですが、物語を読んでもらった方が早いと思うので、さっそく読んでみてください。
ではどうぞ!
第一章
家の契約直前で立ち現れてくる
違和感は間違ってない
それは地元のお祭りの打ち上げで、幼馴染の友人、恭子ちゃんと私で、スターバックスでコーヒーを飲んでいた時のことでした。その恭子ちゃんが息子の勇人くんを、私に相談があると言って連れてきたのです。
ちょっと勇人、雄一くんに相談しなさいよ!
お祭りの集まりなのに急にすみません。母が雄一さんに相談したら?っていうから来たんですけど…
私に相談ってなんの相談?
ほら!ちゃんと話しなさいよ!家づくりの相談でしょ!
あ、はい。今、家を考えてまして、大手の住宅メーカーで家が決まりそうなんですけど、なんとなく「今のままで大丈夫なのかな?」って思っちゃって。漠然とした不安なんですけど…、お母さんに相談したらここに連れてこられて…
連れてこられたんじゃないでしょ!しっかり話しなさい!
家づくりで不安になってるということはもうだいぶ話が進んでいて、契約間近っていう感じじゃないかな?
あ、はい。そうです。見積もりも出てて、設計図も出来上がってるんですけど、なんかうまく乗せられてるというか、妻のみずきはノリノリなんですけど、営業マンと嫁の間でどんどん話が進んでいっているような感じがしてなんか違和感があるというか…。契約に近づくにつれて理由はわからないんですけど、違和感が大きくなるというか…。
なんなの!それは質問になってないじゃない!雄一くんに何が聞きたいの!?
恭子ちゃん、大丈夫。もうわかったよ。勇人くんの違和感は間違ってないよ。というよりも多くの人が普通に家づくりを進めていくとそうなるようになってる。
え?そうなの?
そう。勇人くんさあ、これまでの家づくりの経緯を教えてくれる?
経緯?はあ… 、最初、2人目の子どもができて子ども部屋とか欲しいなって思ってたら、今の賃貸の家だと手狭だということなって、それで家を建てようって話になって、ネットとかで情報収集して、それで近くのハウジングセンターに行ったんですよね。Aホームの展示場に行ったら、しっかりしてそうな雰囲気の営業マンが出てきて、みずきがピンと来たらしく、「ここで見積もり出してもらおうよ!」って言い出して、それでとんとん拍子にこれまで話が進んできた感じです。
それの何が問題なの?みずきちゃんが気に入ったらそれでいいじゃないの?勇人は気に入ってないの?
そういうわけじゃないんだけど…。
わかるよ。たぶん勇人くんの違和感は、みずきさんが家に対して気に入ってたら問題ないけど、それ以外のところを気に入ってるのが問題と感じてるんじゃない?
雄一くん、何それ?どういうこと?
いやいや、住宅業界ではよくあることなんだよ。
そうなの!?何がよくあることなの?
ハウジングセンターの展示場に勤めるような大手の住宅の営業マンは、格好もしっかりとしてるし、格好よく見えるし、奥さんたちが営業マンに思わず惚れてしまって、それだけで住宅の契約が成立していることが事実としてあるんだよね。
え?みずきちゃんがその営業マンに惚れたってこと?
いや、それはわからないけど、一般論として、僕のモデルハウスに来る方の中で、大手を見ている人でそうなっている奥さんが多いってこと。今の勇人くんと同じような違和感をもったご主人だけが、うちの展示場にこっそり来たりするもん。
え?そうなんですか?僕だけじゃなかったんですね。
そう。しかもその違和感、正解だよ。今のままで家づくりを進めたら勇人くんご夫婦が理想とする家はできないと思う。完成直後は良くてもね。あ、恭子ちゃん、こんなこと話して大丈夫?
いやもっと言ってあげてよ!失敗するくらいなら言ってあげて!
じゃあ言っちゃうけど、例えば今のままで家が建ったとしたら、その家に住んだ後、奥さんと揉めそうじゃない?勇人くん
そうですね。違和感がありますし…、そんな予感はありますね…。
勇人くん、恭子ちゃんの息子だからはっきり言うね。その違和感、営業マンに対しての嫉妬もあるでしょ?
え?
何こっち見てるのよ!もうめんどくさいわね!こうやって雄一くんが時間をとってくれてるのよ!正直な気持ちを言っちゃいなさいよ!
恭子ちゃん、変わらないねー。さすが僕が惚れた人だけある。
え?雄一さん、お母さんのこと好きだったんですか?
小学校の頃ね。その頃から性格はまったく変わっていない(笑)
雄一さんとお母さんってそういう関係だったんすね。
僕のアイドル、初恋の人。
そうか。そうだったんですね。なら言っちゃいます。雄一さんに言われた通りです!最近のみずき、おかしいんです!なんか全部、営業マンの言うがままに話が進んでいって。それで契約しないといけないみたいになっていて。みずきと営業マンの間に入れないし、かといってその状況を相談できる人もいないし、それでお母さんに「大丈夫かな?」って相談してみたんです。
なるほど!わかった。お母さんが好きだという者同士力になろう!
雄一さん…
あなたたち、何言ってんの…。男ってほんとバカだね。でもみずきちゃんもバカ!何やってるの!本当に。それで勇人、みずきちゃんは契約したいって言ってるの?
うん。他は見ないの?って言っても聞く耳持たないし。営業マンは早く決めてくださいって言うし。
でもそこに違和感を感じることができてよかったね。感じないでそのまま契約しちゃう人もいるし、奥さんの暴走を止められない人もいるわけだから。でもそんな状態で建てた家、まず理想の家にはならないね。
でも雄一くんさあ、みずきちゃんは営業マンの言いなりなわけでしょ?どうしたらいいの?
たぶんこれから話すことを勇人くんが理解して、それをみずきちゃんに話せばわかってくれるはず。住宅業界の闇の部分をね。
闇ってなんですか?教えてください!
わかった。こんなことを言うとすべての大手の住宅メーカーを敵に回しちゃうんだけど、昔からこの業界は、お客さんにいかに考えさせないか?いかに早く決めてもらうか?だけを考えてきたんだよね。ハウジングセンターだって、結局はそこの中から決めないといけないような雰囲気を作り、考える選択肢を少なくしているわけだし、そもそも図面から良い家になるかどうかがわかるお客さんってほぼいないから、営業とか設計から「これが良いでしょ?」って言われたらそう思っちゃう。この業界は早く決めてもらうためにいろいろなことをやってるわけだけど、その1つがみずきちゃんに今、起こっていることなんだよね。
何それ!そんなの今、問題になってるホストみたいじゃない!惚れさせてお金を払わせるみたいな!
その手法だけじゃないよ。お客さんが考える時間がなくなれば早く決まるから、値引きとか、条件付き分譲とかで縛ったり、今契約すればプレゼントをあげるとか、もう手法なんて腐るほどあるよ。手を変え品を変え、でもやってることは変わらない。とにかく考える時間を与えない。そうすれば契約が取れるからね。
そういうことだったのか…
そう。動機から家づくりをはじめて普通に家づくりをしようとしたら、その業界の常識の中に入り込んでいくようになっている 。だからみずきちゃんのせいじゃない。相手は何枚も上手だし、しかもそれが何十年も普通になっているから、周りに聞いたところで「高い買い物だからプロに任せたら?」なんてことを言われちゃったりして、その常識の中に巻き込まれていく。
知らないって怖いねー。
ちなみに家づくりの失敗談を探そうとしてもまず見つからないからね。
え?そうなんですか?
そうだよ。周りでいるそんな人?「俺、家づくり大失敗したよー」なんて言ってる人。
そ、そういえばあまりいませんね。理由は教えてくれないけどあそこはやめておけって言ってくれる友人くらい。
でしょ?失敗談ってネットにも出ないからね。高い買い物で失敗したなんて言いたくないから。それに家づくりの成功失敗って、建てたばかりの時はあまり実感はないんだけど、失敗していた場合、早い場合は数ヶ月後、数年後あるいは数十年後に、「もっとこうしておけばよかったなあ」という形で出てくるから、余計に世間にその声は上がってきにくい。だから、「家づくりは3回建てないと理想の家にはだどりつけない」 、なんて言われるわけ。
3回建てないと理想にたどり着けないんですか??確かにネットにも失敗したとかそう言う声は見つからないですね。
建築途中にここを変えてもらったとか、そんなちっさい情報ならネットに落ちてるかもしれないけど、家を建てたら離婚したとか、新築で家族がバラバラになったとか、息子が非行に走ったとか、そういう失敗は実際にあるのに、それが上がってくることはまずない。家が家族に及ぼす影響力はどんなものよりも大きい のにね。
ちょ、ちょっと待ってください!僕たちの家、このままじゃまずいじゃないですか!えっと、これから家に戻って、みずきをここに連れて来ていいですか?その上でもうちょっと詳しい話を僕とみずきに話してもらっていいですか?
そうしなさいよ!雄一くんごめんねー。お願い♡
もちろん大丈夫。
そう言うと走って勇人くんはスターバックスを出ていきました。そして待つこと30分。みずきちゃんを連れて現れます。
雄一さん!嫁のみずきを連れて来ました!
みずきちゃんはお母さんに会釈をすると明らかにふてくされた態度で同じテーブルに座りました。
雄一くん、時間をとってくれてありがとね。みずきちゃん、私の同級生で幼なじみの雄一さん。
はあ…。初めまして。みずきです。で、なんなんですか?
今の家づくりに違和感があったからお母さんに相談したんだよ。それで雄一さんに相談に乗ってもらったわけ。
何に違和感があるの!もう完璧だし契約まであと少しじゃない!何を今さら言ってるの?何か不満あるの?
なんかみずきちゃんって昔の恭子ちゃんにそっくりなような…
ていうかあなたは誰ですか?
お母さんの初恋の人です。
はあ?どういうこと?
私の初恋の人ではないんだけどね。勝手に好きになった人(笑)
よくわからないですけど、なんで私たちの家づくりに反対するんですか!?
反対してるわけじゃなくて、このままだとまずいって言ってくれたんだよ!君が営業マンに夢中になって家づくりが営業マンの言いなりに進んでるの、わかってる?
バカじゃないの!そんなわけないでしょ!
まあまあ、僕が言ったのはそういうことじゃなくて、住宅業界というのは、とにかくお客さんに考えさせる時間を与えずに早く決めてもらうことに没頭してきたところがあって、そういう過程で作られた家は多くの場合、理想の家にはならないよって言っただけ。
そう!あの営業マンは、こっちが素人なのをいいことに、「家づくりってこうやって進むんだよ」って、「それが一般的だよ、普通だよ」ってこれまで家づくりが進んできたじゃないか?最近のみずきは営業マンの言いなりだったよ。
そんなことない!彼は私たちの家づくりのことを真剣に考えてくれているからここまでスムーズに進んできたんじゃない!あなたがそんなことを言うなんて思いもしなかった!ほんと信じられない!しかも契約直前の今になって!
今だから言うんじゃないか!僕らの家だぞ!家ができちゃってからではもう遅いんだぞ!
2人とも喧嘩しないで。僕は何も2人を喧嘩させるために勇人くんにアドバイスしたわけじゃない。2人に幸せになってほしいし、子どもたちもいるわけだし、家は何回も建て替えられるわけじゃないから、失敗してほしくないから言っただけ。恭子ちゃんの息子夫婦だしね。みずきさん、これだけはわかってほしい。Aホームがどうこう言うのではなく、業界時代がこれまで、お客さんに考えさせる時間を与えず、早く契約することを強要してきた事実を。それでどれだけの失敗が生まれているかということを。先日も、うちの展示場に大手メーカーで建てて3年目の人が建て替えたいって来場されたんだよ。2人にはそうなってほしくないだけ。
3年で建て替え…
そう。18歳で結婚して10年かけて貯蓄して、やっとのことで大手メーカーで営業マンの言われるがままに建てたけど、すぐに不満が出た。それで結局、うちで大型リフォームしたいってなったんだけど、それするとメーカーの保証が切れちゃうから結局、辛抱するしかないって話になった…。だから建てる前にもっと時間をかけて、もっともっと考える時間をかければよかったってものすごく後悔していた…。しかも彼らは僕の友人の子ども夫婦で、勇人くん夫婦とまったく同じ。それもあって、僕は勇人くんにこのことをアドバイスをせざるを得なかったんだよね。家が建つ前に。
ありがたいけど余計なお世話です!
それは失礼だろ!
いやいや、いいんだよ、勇人くん。昔っからおせっかいジジイって言われてるから(笑)みずきさんもこれまで頑張って家づくりをしてきて、急に変な人が現れて余計なことを言ってるわけだから当たり前の反応だよね。
でも…
でももし、僕が今日話したことにちょっとでも気になることがあったなら、今度そのその営業マンに会う時にこれだけ言ってほしいんだ。
な、何を言えばいいですか!
うん。「この図面と見積もりを勇人くんのお母さんとお父さんに見せる時間をくれますか?」この言葉だけ言ってもらっていい?その反応でその営業マンが、勇人くんご夫婦のことを本気で考えているか?がわかるはずだから。
みずき、この言葉くらいなら営業マンに言えるでしょ?僕だって今回の家づくりに反対してるわけじゃないし、でもちょっと落ち着いてみずきと、ちゃんと考えたいと思ってるだけだから。
まあそれくらいなら。わかった。
そういうと勇人くんご夫婦はスターバックスを後にしました。
雄一くん、ありがとね。それであの言葉を営業マンに言うと何がわかるの?
ん?あの質問で、その営業マンがお客に対して思いやりのある人物かどうかがわかるようになってるんだよ。
何それ?意味がわかんない。それで2人の家づくりはうまくいくんでしょうね?
それは2人が決めることでしょ(笑)でも勇人くんの違和感は間違ってない。
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